2016年4月17日日曜日

うおー! さおー!


あるオープンマイクに行こうと
あるところに行った。
電車が遅れてて倍くらい時間がかかった。

20時くらいに到着して、ドアの前に立った。
細長いガラス窓から中を見ると、どうやら誰もいない。
しかも明るい。
明るいところで演奏するのはとても苦手だ。
うーんこれは来たらあかんやつやったんかもしれん。

よし、やめよう。
これは僕なりの勇気である。

近くのアーケードでストリートをやっている女がいたのでその反対側に座って、
なんとなく聴きながらこれからのことを考える。

最近積極的にSNSを見ていないが、この日ライブをやっている人が結構いた。
でももう20時半くらいだ。遅い。
アホや~。

かと言ってこのまま帰っても安らかには眠れない。
誰かと話したかったけど、
目の前は弾き語り女は話かけたいと思うほどではなかった。

「私の恋は各駅停車」的な歌はもう何千年も前からあるが、
人は何千年も生きないので、その時代のミュージシャンが歌う必要があるのだろう。
でも後継者が多すぎるよ、どう考えたって。
や、需要も高いんやろうけど。
良い声やのになぁ。

僕は30分くらい目の前に居たのに何も言わずに去った。
さぞ迷惑だったろうな。



結局ライブ帰りの友人の都合がついて、
居酒屋で彼のひどい恋バナを聞いて帰った。

ひと言も歌わなかったが楽しかったー。



***



翌日。
いや、やっぱオープンマイクは行きたかったな。
と思ってたら仕事が早く終わったので、
手帳に書いていた渋谷の某オープンマイクに行くことに。

渋谷で何か面白い食べ物はないかな~と少し歩くと、
なんと大阪発の「上等カレー」が東京にも出てきているではありませんか。

店内はまぁまぁの込み具合。
カウンター席が3席空いてたのでその真ん中に座る。
これって心理的にそんなにおかしいことじゃないと思う。
なんでわざわざ知らん人の真横に座らなあかんねん。
その先客にとっても迷惑だろう。
もし2人組が来たら喜んでずれるよ。

しかしカレーが来たとき、店員が「左にずれてください」と言ってきた。
ずれた先はカウンターの角で、僕がいる横長のカウンターに対して直角に縦に2席だけならんでいる。
そこに会社帰りの男女ふたりがいる。
話の内容が聞こえるし、聞かないふりをするのも大変。
なんか3人連れみたいに見えるし。
僕の右には2席空いてる。

結局それから客は来なかった。
結果論にすぎないが、ずれ損だったのだ。

店員に配置を管理されて、おれは一体エサでも食って来たのか。
お食事がしたかっただけなのに、気が散ってしょうがなかった。

「結局それから客は来なかった」と言ったが、正確には、
3人くらい来たけど座らずに去った。
席の距離詰めすぎなんちゃうかな、この店は。
味はうまいのに味わえない。

§

と憤っているうちに問題のハコに着いた。
入る前に、ほんまにオープンマイクか?と思って確認すると、
オープンマイクではなかった。
ホームページで3回くらい確認したけど?
あれーこれ昨日のことや!

というわけで新宿の某オープンマイクに行くことに。

20時半くらいに到着すれば文句ないだろう。
もはやどんなオープンマイクでも良い。



扉を開けると、20人くらい入ると満員に近いかという広さで、青っぽく薄暗かった。
そこにはマスターしかいなかった。
「いやっしゃ~い! 今日は貸し切り営業です! ようこそいらっしゃいました~! いや~やることなくてYouTube見てましたよ!」
しかし、ちゃんとバーになっていたから、
飲めたらええかぁと思えた。

そもそもこの店は普段はジャズや“昔の”ロック系のプロしか出ていない。
月に1回や2回、アマチュアに開放したところで、
いきなりそんな違う客層が集まるわけもないのである。

しかもオープンマイクにアマチュア弾き語りの人たちが来ても、
そんな簡単にほかの日に来てくれるわけでもない。

マスターは30代に見える40代。
声が大きくよく喋るが、話は押しつけがましくなかったので面白かった。

僕がよく行くようなハコではなく、
古き良き時代というか、団塊世代が愛した時代の音楽の楽しみ方を提供しているハコだった。
生演奏を聴きながら静かに酒を飲んだり、
ロックンロールで踊ったり、スローなナンバーでは自然とチークダンスが始まったり。
でももう今の若い世代には音楽が貴重ではなくなってしまった。

ライブに似たものは動画サイトで見れるし、5回見れば飽きる。
飲むなら居酒屋に行くし、音楽が鳴っていると話せない。

こういう今の状況を時代の変化と言うならば、
「団塊世代が愛した時代」も前時代からの変化だ。
変化するたびに誰かが嘆いているんだろう。
どちらが悪いとも言えない。

ただひとつ変わらないと思ったのは、
ステージをやる人間は、ある程度の金額をとっている以上、
絶対的な違いを見せなければならんということ。

「オバタさん見てたら僕にもできるかな~と思って、ギター買っちゃいました!」
なんて言われないように。
でもそれは楽曲じゃなくても、空気でもMCでもいい。

そこは怠けてたらあかんな。

普段のコミュニティと少し違った価値観で、真面目な音楽の話ができた。
というか聞けた。
いつになるかわからんけど、そのハコにライブを見に行きたいと思う。
王様が出ているので是非!



何しろ演者がいなかったのでたくさん歌った。

1. イングランドの女
2. ヤマザキ 踊るパン祭り
3. メルボルンCity Loopの歌
そして
1. ビッラルさんのモジャカレー
2. 大横川親水公園の猫
3. 竹居薬局の犬

途中でオーナーさんと物腰の柔らかい初老の男性が来て、
マスターと一緒にベンチャーズを3曲ほど演奏していた。

思ってた風のオープンマイクではなかったが、
心に栄養価の高い夜だった。